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07. ハッチェリーの役割・その1

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物語の舞台を再び、キャンベル・リバーにあるサーモンの孵化場「クインサム・リバー・ハッチェリー=Quinsam River Hatchery」に戻したい。

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既に説明を受けた通り、ここでは「ピンク」、「チヌーク」、「コーホー」の3種類のサーモンの孵化事業を行っている。

これは水中にカメラを突っ込んで撮影した写真。見にくいけれどこれは、産卵のために川を遡ってきたサーモンが自然にハッチェリーに上がってくるように設けられたバイパス水路の中の様子だ。数え切れないほどのサーモンが密集している。

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ちなみに我らが「鮭」、つまりシロザケ=チャムサーモン(Cham salmon)は、現状で十分に資源が回復しているので、ハッチェリーに入ってきても何もせずに川に戻すのだそうだ。なぜだかほっとしてしまう。

そして、仕組みはよく分からないけれど、サーモンたちから卵を採取する時は、二酸化炭素で仮死状態にして行うのだそうだ。卵をとれば死んでしまうことに違いはないけれど、少しでも苦しまないように、という配慮らしい。

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人工的に受精させた卵は、川に産み付けられたのと同じように流水の中に置き、孵化を待つことになる。

この写真は、孵化したばかりのサーモンだ。小学校の時に習ったメダカもこんなふうに、お腹に栄養分の詰まった袋みたいなものを持っていた。

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孵化したあと、サーモンたちは写真にあるリングのようなものがたくさん入った水槽へと移っていく。「グラブル・ボックス(gravel boxes)」と呼ばれているそうで、gravel、つまりこのリングが川底の砂利の代わりになるらしい。

ちっちゃなサーモンたちは最初、リングの下や中に隠れながら体を大きくしていき、稚魚と言っていい大きさになると水面近くに上がってくるのだそうだ。

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さて、ここで孵化事業の対象としている「ピンク」、「チヌーク」、「コーホー」について説明しておきたい。

「ピンク」は前回の原稿にある通り、日本ではカラフトマスと呼ばれている。

「チヌーク」とはチヌークサーモン(Chinook salmon)という種類で、日本では「マスノスケ」の名前がある。この写真が「チヌーク」の模型だ。

もっと分かりやすい呼び名では「キングサーモン(King salmon)」がある。作家の開高健さんがアラスカで釣っていた魚、と言うと、分かりやすいのか、分かりにくいのか、世代間ギャップがあるからなんとも判然としないけれど。

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そして「コーホー」はコーホーサーモン(Coho salmon)で、日本名は「ギンザケ(銀鮭)」。スーパーではよくチリ産の養殖ものの銀鮭の切り身が売られているので、今度じっくりと見てほしい。

ちなみにこの写真にある体が真っ赤な魚が前回、切り身の写真を紹介した「紅鮭=ベニザケ」だ。産卵時期になるとこんな真っ赤になる。「ソッカイ・サーモン(Sockeye salmon)」と呼ばれていて、Red salmonという言い方もする。

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そしてベニザケは夏から秋にかけて産卵のため、BC州のフレーザー川に大挙して押し寄せてくる。

特に4年に1度、遡上するベニザケが多くなる「ビッグ・ラン」の年には、その数は数千万匹にもおよぶと言われている。これを見ようと思うなら、BC州の内陸部に足を運ぶことになるけれど、ぜひ1度行ってみる価値はあると思う。

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さて、本題のハッチェリーの取り組みだ。卵を採取して孵化させたあと、稚魚はそのまま川に戻されるわけではない。トップ写真にもあったこの写真を見てほしい。

小さな背びれのところに「missing fin??」とあり、頭のところには「keep the head!!」と書いてある。

実はハッチェリーで孵化した3種類のサーモンのうち、チヌークとコーホーについては川に戻す前に、人間の手によってこの小さな背びれを切り取ってしまうのだ。

こうすることで、釣りでも漁でもつかまえたサーモンに背びれがなければ、「ハッチェリー生まれ」であることがひと目で分かるという仕掛けだ。たとえこの背びれがなくても、泳いだり方向を定めたりするのに何の影響もないそうだ。

そして問題は「keep the head!!」だ。サーモンの頭を一体どうしろと言うんだろうか。

文・写真:平間俊行

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