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09. 僕の釣果

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僕がキャンベル・リバーで宿泊した「ペインターズ・ロッジ」の建物が、朝日を浴びながら少しずつ暖かな色に染まってきた。

太陽が辺りを照らし始め、きょうという日が未明から早朝へと移り変わりつつあるのを感じることができる。これからボートに乗り込み、初めてのサーモン釣りに挑戦するのだ。

キャンベル・リバーには「TYEE CLUB(タイイー・クラブ)」という、大物のサーモンを釣った人だけがメンバーになれるクラブがある。設立は1925年という歴史ある団体だ。

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そしてペインターズ・ロッジは1940年のオープン以来、火事で建物が失われた2年間をのぞいて毎年、そのシーズンで最も大きなサーモンを釣り上げた人などを讃えるTYEE CLUBの表彰式の場となってきた。

つまりここはTYEE CLUBのメンバーの「たまり場」のようなホテルなのだ。

釣りのライセンスなどの手続きを行うセンターの屋根で、風見鶏というか、“風見サーモン”が僕を迎えてくれた。

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しかしだ、僕にどんなビギナーズ・ラックが訪れようと、TYEE CLUBに入会するのはまず不可能だろう。

なにしろ条件として釣り方などにいろいろな決まりがあるけれど、まずはもとにかく、30ポンド以上のチヌーク(Chinook)、つまりキングサーモンを釣り上げなければならないのだ。

TYEE CLUBのポスターが貼ってあった。30ポンド超ってこんな感じ。キロで言うと13~14キロになる。

僕は以前、富山県に住んでいたことがある。寒ブリで知られる富山の氷見(ひみ)漁港では、6キロ以上の脂の乗った寒ブリが安定的に出荷できるようになると「寒ブリ宣言」というものが出されていた。そして13~14キロの寒ブリなんてかなりの大物だった気がする。

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「TYEE」というのは、もともと先住民の言葉で「酋長」とか「王」とか、人を超越した存在、といった意味なんだそうだ。

超越の「証し」が30ポンド超、ということなんだろう。

TYEE CLUB入り、なんて不遜なことはもちろん考えもしない。素人でも釣れるんだろうか、などと思いながら桟橋へと降りていく。たくさんのボートが係留されていて、釣り人たちを静かに待っていた。

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いよいよ出発だ。ボートには魚群探知機も備えられていて、水中の様子が把握できる。

疑似餌のセットなど必要なことはガイドさんがやってくれるので、僕のような初心者でも心配はない。

竿をボートのへりに固定し、とにかくサーモンが食いついてくれるのを待つだけだ。

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昔は30ポンドどころか、70ポンド近いとんでもなく大きなサーモンが釣れたりしたそうだけれど、さすがに最近では、大きくても50ポンド程度だという。

それはそうだろう、ハッチェリーでサーモンの放流に取り組んでいるぐらいだ。豊かな海と言っても昔のようにはいかないのは当然のことだ。

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岸辺の岩肌に、四角の中に三角のマークがあるのが分かるだろうか。反対側にも同じマークがあって、この2つを結ぶラインから外で釣りをすることが禁じられている。これもサーモン保護の取り組みの一環だ。

資源としてのサーモンを守ることに配慮しつつ、サーモンとの勝負を楽しむ、というのがここでの釣りの姿なのだろう。

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さて、僕自身のサーモンとの勝負はどうだったのかと言うと、写真のようなちっちゃなサーモンが1匹釣れた。小ぶりのサバぐらいの大きさだ。

しかもあの背びれがない。ハッチェリー生まれだ。よくぞ元気でいてくれた、となんだかひどく愛着を感じてしまう。こうした小さなサーモンは当然、リリースしなければならない。

ちなみにこれより少し前、結構大きなサーモンが僕の竿に食いついたことはお知らせしておきたい。

釣りでは、逃がした魚の大きさを誇張してしゃべることがよくあるようだ。しかし僕の場合、嘘偽りなく本当に大きなサーモンだったのだ。ガイドさんも「大きかった」と言ってくれていた。

もちろん、大きいと言ってもTYEE CLUBはとても無理だ。カツオぐらいだろうか。いや、よくよく考えると「かなり立派なサバ」程度だったかもしれない。

文・写真:平間俊行

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