13. サーモンという名の寿司ネタ

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せっかくバンクーバーでのサーモン料理の話が始まったところで大変恐縮なのだが、ここで話の場面をいきなり日本の回転寿司へと戻すことをお許しいただきたい。

これから僕が話したいのは、「サーモン」なる寿司ネタとは一体なんなのか、いつから「サーモン」が生で食べられるようになったのか、ということだ。

この連載でも以前書いたけれど、かつて日本では「サーモン」とは「鮭」のことであり、そのほとんどが「シロザケ」というサーモンの1つの種類を指していたのだ。

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そしてその食べ方はと言えば、生の鮭ではなく、「塩鮭」とか、正月用の「新巻鮭」とか、とにかく塩漬けした鮭の切り身を焼いて食べたり、あるいは石狩鍋のように鍋の具材にしたり、とにかく火を通して食べるのが普通だった。

だからある年齢以上の人にとって、「サーモン」は比較的最近になって登場した寿司ネタだし、鮭でもサーモンでも、生で食べるということはあまりしなかったのだ。

それに、もし昔から生で食べていたのなら、この寿司ネタの名前は「サーモン」ではなく、「鮭」になっていたはずだ。鮪が「ツナ」ではないように。

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そうすると「炙り鮭のマヨ」なんて寿司ネタも存在したのだろうけれど、塩鮭の切り身にマヨネーズ、みたいな絵が頭に浮かんできて、何となく受け付けない感じがする。

それはともかく、じゃあ回転寿司の「サーモン」とか、スーパーで売っている刺身用の「サーモン」、あるいは「トラウトサーモン」や「サーモントラウト」とは一体なんなんだろうか。

調べてみるとそれは、アトランティック・サーモンをノルウェーとかカナダのブリティッシュ・コロンビア州、チリなどの海で養殖したもの、あるいは日本では淡水魚のイメージが強い「ニジマス」を海で養殖したものなのだ。

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「ニジマス」だけれど、マスとかトラウトとか呼ぶより、サーモンの方がなんとなく美味しそうに聞こえるからだろうか、そこで「トラウトサーモン」とか「サーモントラウト」とか、よく考えても分からない、考えても無駄、みたいな名前が登場してくることになる。

そして養殖の場合、いろいろな対策を講じることによって、天然のサケ・マスのように体内に寄生虫が入るのを防ぐことができるので、寿司や刺身として、つまり生で食べることができる、というわけだ。

そもそも昔は生食うんぬんの前に、今のような冷蔵・冷凍技術がなかったため、鮭は塩漬けにしたり燻製にしたり、要は保存が効くようにした上で、火を通して食べるものだった。

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塩漬けにすると、鮭の細胞から水分が外に出て、そのあと塩分を含んだ水分が中に取り込まれることによってタンパク質が凝固し、腐敗の原因となる菌の繁殖を抑えることができるのだ。

燻製も理屈は同じで、そこに煙でいぶすことによる殺菌効果が加わることになる。

しかしいまや、アトランティック・サーモンやニジマスの養殖のおかげで、僕らは回転寿司でサーモンとか、サーモンのカルパッチョとか、炙りサーモンとか、もっと脂の乗ったトロサーモンとか、そんな寿司を手頃な値段で食べることができる。

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大手食品会社「マルハニチロ」が2016年に実施した調査によると、回転寿司で「よく食べるネタ」、「最初に食べるネタ」、そして「シメに食べるネタ」でいずれもサーモンがトップとなり、“3冠”を達成したんだそうだ。すごい人気だ。

しかし一方で、サーモンの養殖によっていろいろ難しい問題も起きているという。

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1カ所にたくさんのサーモンを集めて養殖することにより、周辺の海が汚れるとか、いろいろな薬が使われているのではないか、といった指摘が出ているのは知っている人も多いと思う。

まあ、アトランティック・サーモン、つまりタイセイヨウサケ=大西洋のサケを太平洋で養殖していることなんて、もう大した問題じゃないかもしれない。外国で育った「和牛」なんてものも普通に存在する時代だ。

素人の僕には、サーモンの養殖の是非をにわかに判断する能力はない。

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それに、回転寿司のサーモンや、脂の乗ったサーモンの刺身がある日なくなってしまったら、僕をはじめ多くの人がそれを我慢できるのかも、なんだか怪しい気がする。

でも、この脂の乗り方こそが養殖のなせる技なのかもしれない。おいしいけれど難しい。いい答えなんて、どこかにあるのだろうか。

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