バンクーバー 海と風と森と

15. 完全なるオーシャンワイズ

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僕らの子供や孫が、今あるシーフードを同じように食べ続けられるようにと、「サステイナブル=持続可能な」方法で捕ったシーフードを客に提供しようというオーシャンワイズ。

バンクーバーにはオーシャンワイズ100パーセント、つまり提供するシーフードをすべてサステイナブルなものに変えてしまった店がある

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それがバンクーバー港の目の前、ホテル「フェアモント・パシフィック・リム(Fairmont Pacific Rim)」の1階にある「Raw Bar」だ。

ここで料理をいただきながら、もう少しオーシャンワイズについて考えてみたい。最初の生ガキに乗っているのは、イクラと地元産のキャビアという贅沢な取り合わせだ。

次の生春巻きに使われているのはソッカイサーモン、つまりベニザケだ。ただしこの店は100パーセントオーシャンワイズだから、養殖サーモンを使うことはあり得ない。でも天然サーモンは北太平洋を回遊中に体内に寄生虫が入り込むため生食には向かないはずだ。

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実は天然サーモンは、通常よりも低い温度で長時間冷凍することにより、安心して生食できるようになるんだそうだ。

おかげでこんなふうに、鮪の刺身とまったく同じように、天然サーモンの刺身を美味しくいただくことができる。でも、手間をかければ割高になる。だから回転寿司は養殖サーモン中心なんだろうなあと思う。

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次の料理はソッカイサーモンのスモーク。黄色いのは果物のマンゴーだ。スモークサーモンの塩気とマンゴーの甘味がほどよくマッチしていてなんとも印象的だった。

次の料理はソッカイサーモンのカマ焼き。塩をしてから3日間熟成させた上で焼き上げてあるからだろう、何とも言えない照りと、濃厚な味に仕上がっている。

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さて、前回紹介したオーシャンワイズの提唱者、Rob Clarkeさんが、自分が料理している魚の仕入れについて考え始めたのは、1990年代後半のことだそうだ。

目の前の魚がどのように捕られたのか、仕入れの業者に聞いてもまったく分からない。

いつしか漁師に会い、漁師から直接、魚を買うようになって、実は今の漁法が海洋資源に大変なダメージを与えていることを知ったという。

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しかし、1人の料理人にできることには限界がある。そこでRobさんがバンクーバー水族館に相談したところ、水族館側もそのころ偶然、海の生態系を「サステイナブル」なものとするためのプログラムについて考えていたのだそうだ。

2005年にスタートしたオーシャンワイズは順調な広がりを見せ、カナダ全土からシェフやレストランの参加が相次いでいる。そしてこの考え方に共鳴して2014年、100パーセントのオーシャンワイズを実現したのが「Raw Bar」であり、その現場を取り仕切るのが日本人シェフ、Takayuki Omiさんだ。

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Omiさんがお任せでお寿司を握ってくれた。一番右の玉子の隣にあるのがソッカイサーモンの「づけ」。上には地元産のウニが乗っている。

次のソッカイサーモンの握りにはレモンが絞ってあって、よく見ると上にちょこんとシーソルトが振りかけられている。

手まり寿司のネタはスティールヘッドという名前で、ニジマスが海に降りたサーモンだ。梅肉が彩りとしても、味の面でもいいアクセントになっている。

そして一番左がシャリで白糸昆布を巻き、ネタはスティールヘッド、上にはおろし生姜とネギが乗せられている。

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ちなみにワサビも日本からの輸入ではなく、バンクーバー産だ。バンクーバーの水はワサビの生育にあっているんだそうだ。

さて、Omiさんが最後に出してくれたのは、手巻き寿司、と言えばいいんだろうか。

手前は自家製マヨネーズと地元で作られた味噌にハチミツを混ぜ、ソッカイサーモンに塗って焼いてある。

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その左後ろがアボカドとマンゴー。右奥はコーホーサーモン=ギンザケの「ハラミ」の昆布じめだ。どれもこれも本当に美味しい。

Omiさんは僕に、「一生、バンクーバーにいると思う」と語っていた。自然があり、海がきれいだし、走るのが好きなOmiさんにとっては、空気がきれいなこともバンクーバーの魅力なんだそうだ。

オーシャンワイズは素晴らしい取り組みだ。そしてどれもこれも格段に美味しい。もちろん、僕には回転寿司も食べたいという“邪念”があることを否定はしない。でもそれはそれとして、オーシャンワイズを生み出し、一流シェフを釘付けにし続けているバンクーバーって、やっぱり奥が深くて、やっぱり惹かれてしまう街だ。改めてそう実感させられてしまうのだ。

文・写真:平間俊行

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