21. 命のサイクル、そして再生

バンクーバー 海と風と森と21. 命のサイクル、そして再生

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今回のバンクーバーの旅はいつの間にか、サーモンを中心とした「命のサイクル」や「再生」ということが旅のテーマになっていったように思う。

最初からそう意図していたわけではない。文字通り、旅をしているうちに、書いているうちに「いつの間にか」そうなっていた。だからこそ本当の旅のテーマ、旅を通じて感じさせられたことなんだろうと僕は思っている。

と、真面目なことを考えつつ、一方で僕はこの旅の最中、これでもかというぐらい無邪気にサーモン料理を食べ続けた。

「グランビル・アイランド」のパブリックマーケットでは、こんな立派な天然サーモンに出会うことができたし、オーシャンワイズの店で味わった絶品サーモンは経験したことのない美味しさだった。あの味、忘れることなどできるはずがない。

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そして僕がこの旅の最後にサーモンを味わう場所として選んだのが、日本とも関わりの深い街、スティーブストンにある「一朗亭」という日本食のお店だった。

ここにはかつて、和歌山県の旧三尾村出身者を中心に、たくさんの日本人が出稼ぎにやって来て、サーモン漁やサーモンの缶詰作りに携わっていたことは前回ご紹介した。

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太平洋戦争によって日本人は財産を奪われ、収容所に送られてしまったけれど、それでも戦後、スティーブストンに戻ってきた人たちもいたのだ。

「一朗亭」のYADOKOROさんによると、今、スティーブストンで暮らす日系3世のお年寄りの言葉は、英語と和歌山なまりの日本語が混じり合っていて、「Meらがよう」「Youらがよう」といった感じになるんだそうだ。

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またこのお年寄りたちが存在感たっぷりで、「若手」は当然のように、ゲートボールの際の運転手など、地域への貢献が求められる。

漁師の方も多くて、「なんで養殖なんて使うんだ」と怒られてしまうので、店では養殖サーモンは使わない。店の味にも大先輩たちから厳しいチェックが入るのだ。どおりで、どれもこれも美味しいはずだ。

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それでいて、その「Meらが」「Youらが」と話すお年寄りたちが、集まりでは必ず「一朗亭」を会場に使い、店を盛り立ててくれるのだというのだから、本当にいい話だと思う。

いろいろ悲しい出来事もあったけれど、全てがぶち壊しになるわけではない。

人の健気な営みによって何とか「芽」を残すことができる。スティーブストンに「Meらが」「Youらが」という言葉が飛び交うことこそ、「再生」の象徴なんだろうと僕は思っている。

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さて、急に私事で恐縮だけれど、僕は2016年7月から転勤のため大阪で単身赴任生活をしている。単身赴任はどうでもいいのだけれど、今回のバンクーバー取材のためいろいろ調べているうちに、ブリティッシュ・コロンビア州、そしてバンクーバーと大阪の意外なつながりを知ることになった。

1つは既にご紹介したけれど、1970年の万国博覧会跡地にある「国立民族博物館」に、ブリティッシュ・コロンビア州の先住民アーティストによる本物のトーテムポールがあったことだ。

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そしてもう1つ。この万博には「カナダ館」だけではなく、「ブリティッシュ・コロンビア州館」も出展していて、そのパビリオンがなんと、樹齢550年のバンクーバー島の巨木で作られていたのだ。

それがこの写真。なんとも豪快な建物だ。しかも話はこれだけでは終わらず、なんとこの巨木の1本が喫茶店のカウンターとなって、今も大阪にあるというのだ。

大阪市内の十三(じゅうそう)というところにある「バロック喫茶 もみの木」。

ダグラスファー(Douglas fir)、つまり巨大な「もみの木」の丸太は、長さ9メートルの分厚いカウンターになっていた。

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万博の時に樹齢550年だったのから、この「もみの木」は形を変えて約600年も生きていることになる。カナダ建国よりはるか昔から、カナダの大地を見つめ続けてきた巨木なのだ。

万博終了後、パビリオンの巨木の多くがベニヤ板にされてしまうと聞き、あまりにもったいないと考えた“マスター”が、その1本を業者から入手し、カウンターにし、仕事を辞めて喫茶店を始めたのだそうだ。

万博の翌年のオープン以来、50年近く同じブレンドの味を守り続けている。本当に美味しいコーヒーだった。

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そして、カップの受け皿にはあの印象的な「ブリティッシュ・コロンビア州館」のパビリオンのデザインが。あまりに素敵すぎて、こっそりカップと受け皿を持って帰りたくなってしまった。

大阪とバンクーバーの意外なつながり。そして偶然、大阪にやってきた僕とバンクーバーのつながり。誰かが僕に、これからも「命のサイクル」と「再生」の物語に関わり続けろ、とでも言っているのだろうか。

「命のサイクル」を知ることで、サーモンを食べることの意味がまったく変わってくる。

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「命のサイクル」の中で作られたことを知れば、トーテムポールもまた違って見えるはずだし、悲しみと喜び、「再生」の物語を知ることで、スティーブストンという海辺の街もまったく違ったものとして感じられると思う。

このシリーズの最初に書いた通り、僕が伝えたかったのは、バンクーバーの新しい魅力と歴史の奥深さ。そして、相変わらず、僕のメッセージはたった1つだ。

さあ、バンクーバーに行きませんか。

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